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自由気ままに食事をするという喜びと恐怖

Netflix野武士のグルメお題「ドラマ野武士のグルメの感想」

独りで外食をするのが面倒くさい。いや、面倒くさいというより怖いと言った方が正しいのかもしれない。

独りで注文をするのが怖い。独りで食べるのが怖い。独りで会計をするのが怖い。いい歳をしたおっさんが何を言っているのだと思う向きもあるかもしれないが、実際そうなのだから仕方がない。

食べるという行為は単なる栄養補給なのだろうか?そうだとしたら、外食産業も料理番組もグルメ漫画も成り立つまい。「食」は人類にとって最大の娯楽なのだ。

独身時代はほとんど料理をしたことがなかった。一人分の食事を作るのは工夫しなければ経済効率が悪いし、生ごみの処理にも困る。それなら買ってくるか、外で食べた方がいいと考えていたのが主な理由だ。

結婚して料理を作るようになった。共働きだったから先に帰った方が食事を作って相手を迎えるというのが我が家のルールになったのだ。この時の経験が今も私の中に残っている。自分のために作る料理は面倒くさい。しかし、美味しいと言ってくれる誰かのために作る料理は楽しいということに気付いたのだ。

ドラマ「野武士のグルメ」の主人公、香住武は、定年退職後、自由気ままに食べることの楽しさに気付く。自由気ままに食を楽しむという設定は、原作が同じ「孤独のグルメ」の井之頭五郎に似ている。しかし、野武士を気取る香住武の背後には奥さんの存在が透けて見えるのだ。家庭に縛られず、会社に縛られず食を楽しむという共通のファクターを持つ二人の主人公だが、香住武の「自由気まま」は奥さんの愛情に包まれたものである点が決定的に違う。彼が満喫するのは、お釈迦様の掌の孫悟空のような自由であり、本人も決してそれ以上の自由は望んでいないのだろう。そのことが「悪魔のマダム」のエピソードで描かれているように感じた。

外食の際は妻が注文を伝えてくれる。妻と会話しながら食べる。会計こそ私が払うが妻が隣にいてくれる。それが当たり前になった頃、独りで外食をするのが怖くなっていることに気付いた。男として憧れるのは井之頭五郎だけど、感情移入できるのは圧倒的に香住武だ。

初めてのおつかいのような香住武の優しい自由を、あなたも体験してみてはいかがだろうか。

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